2009/4/30 8:30 【現在地】
これが、大牧トンネル南口付近から見た、旧道の姿である。
確かに道があったという痕跡は見て取れる。
路肩の擁壁や、その先に続く微妙な平場の断続的連続など…。
だが、直前に見た駈足谷橋の旧道で恐れていた展開は、現実のものとなった。
現道開通後、おそらく速やかに放棄されたと思われる旧道は、豪雪の山腹に放置されること30余年にして、その国道であった過去をまるで喪失してしまったように見える。
良かろう。
望むところ。
季節的には、今がベストシーズンであるはず。
現道がトンネルで失ってしまった庄川峡の車窓を独り占めに出来るのならば、苦労のし甲斐もありそうだ。
とりあえず「大牧とんねる」の扁額が掲げられた坑口から洞門に入り、急な左カーブで90度近く進路を変えると、正面に洞門とは異なるオレンジ色の空間が見えてきた。
出口まで見通す事が出来ないそれは、全長1330mを誇る大牧トンネルである。
そして旧道の分岐は、その本当の坑口の直前にあった。
一応自動車でもここを曲がって、旧道のある“外”へ出る事までは出来るし、禁止もされていない。
ただ、後続車がいたら追突されそうで怖ろしい。
いよいよ、旧道探索が始まる。
初っ端から、これである。
遠目に見た時から予感はしていたが、やはり旧道は完全に廃道化しているようだ。
地形図に描かれていなかった時点で、十中八九分かっていたともいえる。
問題は、その状況如何である。
まず、自転車についてはこの時点で持ち込みを辞退させて頂くことにした。
無事に探索が終わってトンネルの反対側に脱出出来たら、トンネルを歩いて回収しに来れば済むことだ。
多分、この状況の廃道を自転車を持って無理やり突破するより、結果的には短時間で攻略出来ると判断した。
(一番やってはいけないのは、ダラダラと途中まで自転車を持ち込み、回収にまで手こずる羽目になることだ)
早速の道の見失いっぷりに驚かされるも、崩れ落ちた上に突き固められた土砂の山の根本、本来の路面があった辺りに目をやれば、ちゃんとその痕跡を見て取ることが出来た。
見覚えがあるギザギザの構造物は、明らかに路肩の駒止めである。
間違いなく、ここに小さな暗渠を渡る道路が通っていたのである。
これに小さく励まされ、いざ単身、先へ進む。
この先想定される旧道