草木(くさぎ)トンネルとは、おそらく日本中でここにしかない、
高速道路から一般道路へと転落したトンネルである。
レポートのタイトルにある「三遠南信自動車道(さんえんなんしんじどうしゃどう)」は、その名の通り、三(三河)・遠(遠江)・南信(南信濃)の各地方を結ぶ、我が国の高速道路のひとつである。
今回紹介する草木トンネルとその前後の道は、この三遠南信自動車道の旧道である。
高速道路の旧道といえば、【道路レポート:中央自動車道旧道】もそうだったが、それと大きく異なっているのは、こちらには現道が今のところ存在しないという点だ。
にもかかわらず旧道があることを不思議に思われるかも知れないが、草木トンネルとその前後の道は三遠南信自動車道として建設されたが、その後の計画の変更によって、一般道路に格下げされたのである。
そして、新たな「三遠南信自動車道」はと言えば、まだ完成していない。
現道はないが、旧道だけが存在している。一般道路として。
しかもそこはちゃんと、誰でも一目見れば、「普通じゃない」と分かる姿になっている。
計画の変更から時間が経つにつれ、カムフラージュは進んでいるが、まだまだ完全に臭いは消えていない。
今回は、序。
どこにそんな道があるのかという話しから、はじめる。
2011/3/3 【地図は後ほど】
今回の旅は、しばらく車で行く。
写真の交差点は、静岡県浜松市の北部に位置する天竜区水窪町奥領家(てんりゅうくみさくぼちょうおくりょうけ)の国道152号上にある。
少し前(平成17年)までは水窪町という独立した行政の役場所在地だったところであり、今も景色自体は当時からほとんど変わっていないと思う。
そして、国道152号といえば、“酷道”の世界ではとみに有名な道だが、この道を南(終点:浜松市)から北(起点:長野県上田市)へ向けてひたすら走っていくと、この水窪町から次の長野県飯田市南信濃(平成17年までは南信濃村)にかけてが最初の酷道区間…自動車交通不能区間となっている。
峠の名で言った方が通りが良いかもしれない。青崩(あおくずれ)峠である。
← 地図で見る現在地はここ。
国道152号を浜松から出発すると、旧天竜市二俣、旧龍山村瀬尻、旧佐久間町大井などを経て、旧水窪町奥領家にやってくる。(これらは全て現在の浜松市内)
ここまでの距離はおおよそ60km