2012/11/7 16:13 【現在地】
このままでは、ヤバイ!!
二人はそう思った。
もともと気軽な探索のつもりだったため出発が遅かったのに、現地に着いてからはあれこれと目移りしてしまい、何一つやり遂げたことがない。
挙げ句の果てに小雨が強雨となり、夕暮れを誘い込んでいる。
もう中途半端なお前らには探索させてやらない。早く帰れ。そうダムがぼやいている気がしてきた。
ここへ来た大元の目的は、柴犬氏が発見した「岩ノ目橋」の確認である。
これだけは果たさければ、来たことさえ後悔する。
だが、ここまでの無計画な探索のために時間がもう残り少ないので、最後の手段を使って橋の捜索を敢行することとなった。その方法とは、岩ノ目沢の上流に架かる現在の岩ノ目橋(以後、これを「新橋」とする)から直接沢を下ることで、湖底にある旧「岩ノ目橋」(以後「旧橋」とする)を探すのである。
「岩ノ目橋」という銘板の画像しか旧橋の位置の手掛かりは無いが、この名前で岩ノ目沢以外の場所にあったらアウトだよな!! 頼むぞ!
林道から樹林と灌木の斜面を突き抜けて、強引に沢底へ下り立つ。
水はざぶざぶと音を立てながら、川幅一杯に勢いよく流れていた。
宝仙湖に注ぎ込む10を越す河川の中では、中くらいの規模の沢であろうか。
多くの沢が一斉にこの勢いで注水しているし、またダムから勢いよく放水している様子も見えないのに、水位があんなに低いのである。
おそらく、もの凄く巨大な浴槽に蛇口で水を注ごうとするのに似ているのだろう。
小さなダムなら、数日で満水になりそうな注水量があるのに。
ところで、現在の地形図ではこの辺りに沢沿いの道は描かれていないが、昭和28年の地形図には、左岸に沿って森林軌道が描かれている。
地形が緩やかなので、橋やトンネルがありそうでもないが、平場くらいは残っていたかも知れない。
もはや、これ以上の寄り道は探索の生死に関わるとばかり、私たちは普段見せないほど先を急いでいたので、目線を送っただけで路盤探しはしなかったが、一応報告しておく。
新橋から沢に降りた直後は、水際にも高木が生えていたが、それから50mも進むと森は高巻きに沢を見守るようになった。
そして代わりに沢の周囲は、灌木と草が生い茂る原野に置き換わった。
これは、玉川ダムの満水位よりも下に入ったことを意味していた。