さて、現地探索だ。
もちろん、時期は冬を選んだ。緑濃い房総の探索は、冬を選ぶのがセオリーだ。
今回の探索の最終目標は、『長柄町史』に存在が示唆されていた “針ヶ谷坂隧道”(仮称)の発見 にあるが、出発前に穴が空くほど町史を眺めても在処を突き止められなかったので、ピンポイントに探すことはできない。
また、私がこの針ヶ谷坂を訪れるのは今回が初めてで土地鑑もないので、まずは地図にある道を辿りながら、周囲の地形の機微を観察してみることから始めよう。
基本的に古い時期の道路ほど単純なルーティングであることが多く、地形を見れば自然と道や隧道の在処が絞られてくることが多いと思う。
広大な山域から見つけるのは困難だが、たかだか100mほどの峠なら、このような半分行き当たりばったりでもなんとかなることを期待している。
具体的な作戦としては、机上調査によって推定された「近世以前からの道」(左図の緑線のルート、以下「古道」)を辿ってみることにした。
この道に隧道があるわけではないようだが、町史に「 現在の道路より東側の泉谷を通り、トンネルをぬけて権現森の東中腹を通って長柄山に至る 」や「 明治16年泉谷の先にトンネルをほり、権現森の南に出るものに改め 」といった記述があるので、とにかく「泉谷(いずみやつ)」という場所は隧道に近いらしい。
「泉谷」は現在の地理院地図には記載がないが、旧地形図では古道が通る谷にその名が注記されている。
……「泉谷」が怪しいぞ。 取り調べだ!
2018/2/25 14:45 《現在地》
午後3時前の探索スタート。なんでオメーは探索の開始時刻がいつもおせーんだよというツッコミを受けそうだが、忙しいんだよ探索で! 本日はこれが自転車を車から降ろして臨む4箇所目の探索箇所であった。時間があまりないので(常套句)、案ずるより易く隧道が出てくることを願うばかりである。
ここは長柄町針ヶ谷の県道13号(県道147号重複)上で、目の前にある何気ない脇道(矢印)が、針ヶ谷坂を越える 古道の入口 である。
2車線の県道はこのまま直進し、200mほど先にある大きな青看がある三差路を右折すれば、針ヶ谷坂を越える県道147号の「千葉」方面へ。左折は県道13号の「市原」方面となる。
この景色だけを見れば、現県道は昭和以降の新道のような雰囲気だが、明治36年の地形図に