栃窪隧道の罠にまんまと掛かった私は、見えている出口を利用することが出来ず、西口の外見を見ずに撤退した。
よってここからは、その西口を外から目指す探索である。
仮に辿り着いたところで、隧道内を探索する余地は皆無という、オブローダーにとってはモチベーションの維持が難しい展開だが、そこは私の持ち前の負けず嫌いの精神をもって、屈辱へのリベンジマッチを期したのだった。
絶対にこのままでは済まさんぞ!
2011/5/17 10:24
泥靴でワルクードのアクセルを踏み、桑探(くわさぐり)峠を越えてやってきたここは、栃窪町と同じ見附市に属する椿澤町だ。
町内には神社仏閣が点在しており、平野の山際という立地に照らしても、いかにも歴史の深そうな集落だった。
栃窪隧道へ至る椿田川沿いの道は、集落内を南北に貫通する旧県道から分岐していた。
目立たない分岐地点で、行き先についての案内板などもないが、大きな火の見櫓と、赤い屋根の山門が目印になる。
ここから栃窪隧道までは道路地図上で約2.8kmの道のりがあり、後半の700mほどは徒歩道を示す破線で表現されていた。廃隧道が目的地となる道だ。きっと破線部は廃道だろう。
近くに車を停め、自転車に乗り換えてから、再スタートを切った。
この道、栃窪隧道というキョーレツな“魔窟”へと通じているワケだが、入口はむしろなんだか「ありがたい」感じがする。
なにせ道の入口に、道路脇というか道幅の3分の2くらいを埋めるような形で山門がある。山門は本格的で、両側にはちゃんと仁王像が侍っており、また門内に巨大な“わらじ”が束ねられたものが鐘のようにぶら下げられている。だからなんだか旅人には御利益が多そうな気がするのである。
山門はここにあるが、本堂はこの道を100mほど進んだ先から左へ入った奥にあるようだ。
秘密山という意味深な山号を持つ、椿沢寺(ちんたくじ)である。
ありがたい山門からスタートした道だったが、お寺をスルーして直進すると500mほどで集落から外れ、こんなどこにでもありそうな山道になった。
道沿いを流れているささやかな川は、椿田川だ。
この川の源流付近に栃窪隧道はあるはずで、さきほど私を退けた洞内の水は、やがてここを流れて、刈谷田川と信濃川を経て日本海へ注ぐのだろう。
道は舗装されており、道幅も1.5車線くらいはあるので、栃窪町内の