千葉県にも、かつて森林鉄道があった。
…と言ったら、どうだろうか?
房総半島の谷深い山々を知る人ならば、別に不思議も無いだろうと言うかも知れない。
だが、林鉄に詳しい人のほとんどは、千葉県に森林鉄道はなかったと考えているはずだ。
私もそうだった。
なぜそのような“常識”が生まれたかといえば、おそらくは出回っている資料のせいだ。
林野行政を掌握する林野庁がサイトで公開している「 国有林森林鉄道路線データ (平成28年1月31日修正)[pdf] 」に、千葉県内の路線は記載されていない。全国の1100以上の路線が網羅されているのにも拘わらず、千葉県にはただの一路線もない。
同資料が引用文献として掲げている、林鉄ファンのバイブル的存在『 全国森林鉄道(JTBキャンブックス) 』の巻末にある「林鉄一覧」も同様である。 (もっとも、これらは国の国有林事業に属する森林鉄道の一覧表なので、民間業者が独自に敷設した路線は掲載されていないし、そのような路線を含めた一覧は、おそらく存在しない)
千葉県にも、かつて森林鉄道があった。
それも、旧東京営林局千葉営林署が運用していた、歴とした国有林森林鉄道だった。
本稿は、私が上記の結論を得るまでの顛末を述べたものである。
メインとなるのは2014年12月に行った探索で、その探索写真を保存したフォルダに、帰宅直後の私は「 元清澄林鉄最終作戦 」と名付けていて、最近では稀に見る 中2 気合いが感じられる。
今回はその「導入」であり、メインの探索を起承転結の「結」としたときの「起」の部分を書いている。
すべての始まりは最終探索の約5年前、千葉県君津市の“ある廃林道”を探索した直後の出来事にあった。
私のそれまでの常識を打ち砕いた、古老の証言
千葉県君津市南部、亀山ダム西側の山域に、2kmほどの長さの廃林道がある。
地形図には普通の細い車道のように描かれているのだが、実際には入口から500m足らずで廃道化し、途中には結構長い廃隧道もあるのだが、終点まで行くのは結構骨が折れる。
私は平成22(2010)年2月4日、毎年の恒例である冬の房総遠征の中で、この廃林道を探索した。
廃林道の探索を終え入口に戻った私は、そこで一人の古老と遭遇した。右の写真はそのときのものだ。
私は廃林道の昔の話しが聞ければと声をかけたのだが、古老は鉄砲うち(