ライター : pato( @pato_numeri )
全区間をあわせた一日の平均利用客が、2008年の時点で 370人 という鉄道の路線がある。
「あれ?それってヤバくない?」と思ってしまいそうだが、実際にヤバくて 圧倒的な赤字路線 になってしまっている。
2014年以降は 日本で最も輸送密度の低い路線 にまでなってしまった。
島根県と広島県の県境にある三江線(さんこうせん)というローカル線がそれで、島根県の江津市(ごうつし)から広島県の三次市(みよしし)を結ぶ全長108キロにおよぶJR西日本の路線だ。1930年から建設が開始され長い年月をかけて部分開業を繰り返し、1975年にやっと全線開業した古い歴史を持つ。
中国地方を縦に移動する移動手段として建設されたが、沿線の街の過疎化、マイカーの普及など時代の変化と共に利用者が減少。2016年9月、JR西日本は利用者数の落ち込みと、激甚化傾向にある災害へのリスクの高まりを理由に三江線の 廃線 を発表した。これをもって三江線は2018年3月末で廃線となり、この世から消え去ることが決定したのだ。
この世から消えゆくものは無条件で美しい。
造形や色彩など空間的な美しさは確かにあるが、それと同時に時間的な美しさという概念も確かに存在する。あるものが生まれ、存在し、そして消えていく、その消えていく前の一瞬の儚さは何物にも代えがたい美しさがある。花火は夜空に消えゆくから儚く美しい。あれがずっと夜空に瞬いていたとしたら、チカチカしてあまり美しくないのかもしれない。
多くのものはある日突然消えてなくなる。昨日までの存在が嘘のように、まるで幻であったかのように消え失せてしまうのだ。だから、消える直前の美しさを実感する機会はそうそう多くない。それだけに、そのうち消えることが分かりきっているものはそれだけで尊く、美しい。そう思うのだ。
三江線の駅も線路も車両も全てこの世から消え去ってしまう可能性が高い。
沿線の人たちの「三江線のある日常風景」は確実に消え去るだろう。その存在と美しさを、それらを記録しておかなければならないのではないか? そんな想いに駆られて今回、三江線の全駅を写真に収めてこようと決意した。
なくなってしまう三江線をどうしても記録に残しておきたかったのだ。
と、書くと何だかもっともらしいのだけど、真相は「 廃止になる三江