2016/2/21 12:18 【現在地】
戦慄を誘う謎の井戸を後に、さらに南へと向かって軌道跡を進むことにする。
この軌道跡に出会った地点からここまで、上部を並走する国道の間隔は徐々に狭まってきており、まだ見上げてもその路肩が見えるわけではないが、行き交う車の音はひっきりなしに聞こえるようになった。
このまま近付けば、私の前にどのような場面が登場するのかは、だいたい予想がつく。
それはひとことで言えば、良くない未来の予感だった。
ぬぅわ〜!!
いきなり、来やがったーー!!
井戸の地点から南に進むと、小さな尾根を回り込んだ辺りから猛烈なササ藪が始まり、それだけでなく、ここまで途切れず続いていた足元の平場が、無くなった。
これはいったいどうしたことだ。
地形はさほど急峻ではないので、頑張って藪を掻き分ければ、まだ進めるが…。
12:24 【現在地】
で、我慢して数十メートル進んだのだが…
これは、アカンです。
もう路盤がどこか分からないし、藪が半端なく濃いために、1m進むのだってえらく面倒だ。しかも、少し意地を張って進んだ所で、その目的となるような場所も無い。
せいぜい、路盤上(正確には路盤の延長線の斜面上)から見えるようになった、現国道の路肩が目的地となり得たのだが、ここから斜面を斜めに進んで向かうのは、藪を進む距離が長く余りに面倒。
結局、この辺りの路盤が斜面化して失われている理由は、関東大震災などの被災によるのか、国道の拡幅に伴う残土投棄の結果なのか、不明だが、国道に近付けば路盤が失われるだろうという“予感”は、現実になってしまったのである。
私は悩んだ末、少し引き返して斜面の藪の浅い場所から、国道へと脱出することにした。
12:28 【現在地】
おおよそ40分ぶりに、廃線の眠る森から、国道の喧騒世界へと復帰した。
現在地は大名ヶ丘バス停と大洞台バス停の間で、自転車を路肩に置いてきた“入山”地点から、国道を300mばかり南下した地点だった。
すなわち、私がこれまでに辿った軌道跡の長さも300m程度ということだった。
この写真に重ねて、非常に大雑把ではあるが、今回辿った軌道跡と、そこへの出入りに使ったルートを表示した。
山林や藪が濃いため、国道からではほんの少しでさえ、この斜面の中腹に幅2〜3m程度の軌道跡が存在する様子は窺い知れない。