忘年会シーズンに合わせて、東京・多摩西部を中心に路線バスを運行する西東京バス(本社・八王子市)が、JR中央線の中央特快最終電車で終点の高尾駅にたどり着いてしまった乗客を“救済”するバスの運行を始めた。
中央線は、新宿駅を午前0時11分に出発する中央特快高尾行きを利用して寝過ごしてしまうと、高尾駅到着は0時55分で、接続する上り電車はない。また、高尾山にほど近く、周辺に夜を明かすことができる施設も少ないため、週末などは駅近くで立ちつくす人も少なくないという。
西東京バスの運転手も別の会社に勤務していた当時、乗り過ごした経験があり、同様のサービスを社内で提案。昨年、最終電車の到着に合わせ、乗り越し客を宿泊施設や深夜営業の店が多い八王子市市街地まで送り届けるサービスを実施したところ、料金は日中の倍の880円ながら、7日間で計約150人が利用するなど好評だったという。
今年は12、19、23、26日の土曜日、祝日のそれぞれ未明に運行することにし、12日は6人、19日は24人が利用した。同社は「本来なら深酒して乗り過ごさないのが一番だが、万一そうなってしまったときはぜひ利用してほしい」としている。
◆乗客「感激した」
19日午前0時55分頃、あたりは真っ暗で静寂に包まれたJR高尾駅前。ぞろぞろと乗客たちが改札口から出てきたが、中には千鳥足の人もいる。冷え込む駅前で、西東京バスは社員がプラカードを掲げ、乗客たちを案内していた。
「感激した。生きていればいいことあります」。寝過ごした乗客を乗せるバスを見つけると、八王子市の男性会社員(45)はご機嫌で語り出した。忘年会でワインを飲み過ぎ、2駅前の八王子駅で降りるはずが、寝過ごしてしまったという。
だが、中にはまったく別方向に来てしまった人も。途方に暮れた様子の若い男性は、「千葉に行くつもりが、気づいたら高尾だった」と頭を抱えた。かなり酒に酔っている様子だ。
バスに乗った24人の多くは会社員風で、2人の女性の姿もあった。車内はやや酒臭いながらもいたって静か。午前1時半頃、終点の八王子駅北口に到着すると、人々は駅の明かりに吸い寄せられるようにタクシーや宿泊施設を求め、ふらふらと歩き出していった。