21歳の車掌が駅のホームに置き去りにされ、次の駅まで電車をダッシュで猛追した...。京浜急行電鉄の北品川駅-新馬場駅間で2015年10月14日未明に発生した"珍事"は、世間をにぎわせた。車掌は新馬場駅で再び同じ電車に乗り込み、無事に業務を再開したというが、驚いたのは、置き去りによる遅延が約5分で済んだことだ。5分。駅間の距離にもよるだろうが、人間の脚で1駅を駆け抜け、電車に乗り込むまでが5分で済むものなのか。Jタウンネット編集部では、実際に記者が自ら全力疾走することで明らかにすることを試みた。
北品川駅と新馬場駅の間は約700メートル。あまり離れていないが、京急電鉄広報課に話を聞いたところ、より具体的な状況が分かってきた。
当時、北品川駅で電車の窓から身を乗り出して安全確認をした車掌は、発車可能のブザーを押した後、アナウンス用マイクをホームに落としてしまったことに気付いた。マイクを拾おうとホームに降りた直後に運転士は電車を発車させ、車掌は置き去りにされた。発車時刻は14日午前0時10分。
焦った車掌が急いで改札前の駅務室へ行くと、「近いから新馬場駅へ向かえ」と司令部から指示を受け、走り出した。車掌は沿線の第一京浜道路(国道15号線)を駆け抜けて新馬場駅に着き、運転を見合わせていた同じ電車に乗り込むと、午前0時15分に同駅を発車した。この間約5分。
広報課によれば、「置き去りにされてから、駅務室で指示を受け、実際に北品川駅を走り出すまでには、早くても2分前後はかかると思われる」とのこと。それでも北品川駅で置き去りにされた5分後に新馬場駅を発車したのだから、700メートルの移動に要した時間は3分前後だったことになる。
3分。車掌はスポーツマンなのか? 問い合わせると「プライベートな事柄なので答えられない」とのことだったが、小中高校でサッカー部だった記者は妙な対抗心が沸いてきた。
実際に走ってみなければ分からなかったこと
北品川駅へ向かう。できるだけ同じ距離とコースでタイムを計測するため、スタート地点は北品川駅の駅務室がある改札前、ゴールは新馬場駅のホームとした。ここを3分以内で走り抜けられるか。
忠実さを持たせるため、服装はシャツ、スラックス、革靴と、車掌の格好に近づける。もちろん体操をする時間の猶予はない。時間帯も、辺りが暗くなった午後6時。