【周辺図(マピオン)】
福井県北半分、嶺北地方の日本海に面する地域は、丹生(にゅう)山地が海岸まで迫っており、平地はほとんど見られない。代わりに越前岬を代表とする数多くの海岸美があり、 越前海岸 と総称される名所として知られている。
一方で丹生山地の内陸寄りには、九頭竜水系の河川に沿った広い平野が南北に続いており、県都福井をはじめとしたいくつもの都市が点在しているので、古代の北陸道以来、歴代の大きな陸路はみな海岸線を避けて、この内陸の低地帯を通ってきた。今日の国道8号、北陸自動車道、北陸本線、北陸新幹線、皆そうである。
しかし、越前海岸沖の日本海上は、対馬海流が流れ込む良好な漁場であったことや(越前ガニの高名は誰もが知っているだろう)、近世以前において陸路以上に重要な物流ルートだった北前船の航路にあたっていたことから、地形の険しさにめげず、多くの集落が港を根拠として立地して、その生活を営んできた。
暮らしがあれば、当然道も生まる。
越前海岸を南北に縦貫する今日の国道305号は、そうした生活道路の集大成であり、やはり短くはない歴史を持っている。
険しい海岸線を長く縦貫する道路であるから、国道305号には非常に多くのトンネルがある。
また、その改良史も一朝一夕ではないから、旧道、廃道、廃隧道が珍しくない。
このように、オブローダーにとって日本海沿いの一大名所といってもいい越前海岸における私の探索は、2015年9月14日の終日をたっぷり使って、自転車で北から南へ進めた。
この路線については、ネット上にも先行する多くの偉大なレポートがあると予期されたが、風景を予め知ってしまうのは勿体ないので、出発前の糧は敢えて定番の旧版地形図と「道路トンネル大鑑」に限った。
そして、帰宅後に取り寄せた市町村史で机上調査を行うという、“いつもの流れ”である。
この探索全体の分量はだいぶ膨大なので、越前海岸シリーズの第1弾として、今回は 大味(おおみ)トンネル をピックアップする。
まず、お馴染みの「道路トンネル大鑑」にある大味トンネルのデータは次の通りである。
大味トンネル
路線名:主要地方道敦賀三国線 所在地:福井市清水町大味 延長:67.5m 車道幅員:5.5m 限界高:4.5m 竣工年度:昭和36(1961)年 覆工:済 鋪装:済
「大鑑」は昭