2011/12/2 15:00 【現在地】
驚愕の中で本橋と遭遇してから、10分あまりが経過。
私は小深沢の渓水に足を浸し、天翔る水路アーチを、呆然と見上げていた。
これまで私はさほど水路橋という物に傾倒してきたわけではないので、こうした規模の水路橋が、実際どの程度珍しい物かは分からない。
ただ、これまで様々な旅先で見てきた大型の水路橋といえば、大抵は鋼製の水管そのものを架したものばかりで、一般の道路や鉄道橋のような姿をしたものは少数だったから、ごくありふれたものでないことだけは確かだ。
いま見上げているのは、小深沢左岸の領域である。
右岸側には桁が欠け落ちた部分があって、本橋外見上の最大の特色を成しているが、左岸はここから見る限りにおいてよく原形を保っており、或いは「灰内沢」で行った行為を再現出来るかとも思われたが、
この高さと、老朽ぶりである。
仮に可能だとしても、それをすべきかどうか…する気になるかどうか…は悩ましい。
とにかく、私はもっといろいろなアングルからこの橋の隅々を眺めてみたいと思う。
それは確かなことだから、今度はこの左岸によじ登ってみよう。
左岸は右岸に負けず劣らず急峻で、特に上部に行くほどそうだったが、確固たるルートがあるわけではない。
そこで初めのうちは橋の全体像を楽しめるやや遠巻きの進路を取り、途中からは橋の迫力有る近景を堪能出来るよう、その至近を歩くことにした。
写真はその前半戦にて右岸の斜面を見渡したものだ。
欠拱より流れ出た地下水が、橋の高さに等しい落差を持つ多段の滝となって、勢いよく駆け下っている。
私がいま楽しみに思っているのは、この景色を真冬の厳冬期に再訪して楽しむことだ。
果してこの滝は凍り付くであろうか。
そのとき、橋はどんな装いを私に見せてくれるであろうか。
これを書いているいまも外は猛吹雪で、遠からずこの世界は一面の銀世界に包まれるであろうから…こんなに秋田の冬を楽しみにしたことは、今までなかったと思う。
それにしても、謎はアーチの直下に残されたコンクリート橋脚の正体である。
低いが直立を保っている2本(赤)と、倒壊して横たわる1本(黄)があるが、いずれにしてもアーチの高さには遙かに届かず、単純な旧橋とは考えにくいように思われる。
大錠集落の元住人の方にコンタクトを取ってみたいものだ。
左岸側