15:48 【現在地】
全ては自分の選んだ道ではあったが、ちょっとやばい状況になっている。
秋町隧道までの往復3kmで1時間30分を消費したので、現在時刻は午後4時間際。
闇が全てを覆い尽くすまで、あと1時間ほどである。
昨日も一昨日も探索していたから、午後5時がどれほど暗いかは知っている。
全ての探索目標は攻略されたので、あとは目の前の六厩川林道を少しでも早く走りきるのみ。
六厩川筋の最寄り集落である六厩まではあと15kmあるので、確実に途中で夜を迎えるであろうが、暗中ゆく廃道の距離は可能な限り短くしたいところだ。
六厩川林道をチャリとともに歩き始めたが、すぐに減速を余儀なくされた。
路盤の状況は、庄川林道と同じくらいに荒れている。
森茂林道よりは、路盤に育った木が太い。
果たして、こんな状況の道が、現役区間のそばにあるだろうか。
…無いはずだ。
認めたくなくとも、廃道の“明け”がまだかなり遠いという事を、覚悟しなければならなかった。
そして100mも行かないうちに見えてきた、
地形図にない隧道が。
…本来ならば、叫び出したいほどの興奮シーン。
だが、正直今は恐ろしさが先に立って、…気持ちがざわつく。
今の私には、隧道を必要とするような地形が疎ましかった。
そして、もしこの隧道が秋町隧道のようになっていたら…
私はどうすればいいのか?
ほっ!
貫通してる!
秋町隧道よりも遙かに険しい岩場に掘り抜かれた隧道は、地図が描き忘れるとは思えない100mを越える長さを持っていた。
意匠らしきものがほとんど無いのは秋町隧道も同じだが、あちらでは両坑口の埋没と洞内水没のため確認できなかった全断面が、この通りかなり細長い…まるで鉄道隧道のような…ものであったことが分かった。
隧道名は、秋町隧道同様に埋め込まれた陶製のプレートによって「小簑谷隧道」と判明。
水没した旧集落名をとった秋町隧道と違い、まったく馴染みのない名前である。
小簑谷とは、どこを指しているのだろう。
ダムが出来る前から有ったと思える地名ではある。
この地への人間の介在が古くからあったという証しかもしれない。
隧道内は、ちょ〜〜快適ッ!
吹き抜ける風の冷たささえなければ、明日の朝までここで寝て過ごしたいと真剣に思うくらい。
でも、止めておこう。
天気予報通りなら、今晩から明日に