山行が史上最難の踏破計画、和賀計画発動。
現在、廃水廊から脱出するも、現在地不詳の状況にあり。
陽の元へ
地上である。
未知なる地中を進むこと25分余り、遂に脱出に成功した。
流石に嬉しい。
生還の喜びと安堵が全身を包む。
まだ背後の暗闇に二人の仲間が残っているというのに。
無論、彼らを忘れたわけではなかった。
私は、ここが何処なのかという手がかりさえつかめたら、すぐにでも彼らの元へと戻ろう。
今は「和賀計画」という踏破作戦の途上である。
この探索は脱線以外のなのものでもないのだ。
大急ぎ辺りの様子を覗う。
なにか、この地点が何処かを知る手がかりはないか。
しかし、地中ではどの方角へと進んでいたかも曖昧で、私が脱出したコンクリートドームの脇に一つの小屋が廃態を晒すのみで、場所の手かがりは薄い。
辺りに人家や、人の気配もない。
どうやら、和賀川の支沢のどれかの、林道の終点のようだ。
これまでに見たことはない景色だ。
ドームと廃屋の前には、車数台が停められるだけの広場になっており、その片隅には原型を失った石像が祀られていた。
狐か? カエルか?
しかし、注連縄や、お供え物の酒はそう古くないように見える。
少なくとも、水廊内部よりは最近に人が通った形跡がある。
二棟ある廃屋のうち、一つはドームに付属するプレハブで、もう一棟はその管理小屋らしい。
廃屋と思っていたが、鍵も掛かっており、内部にも荒れはない。
埃が相当に積もっているようではあるが、まだ使えそうだ。
ふと、玄関の足元にある袋を見ると、ジョージアオリジナルやファンタグレープ(これらが廃墟・廃道の定番ドリンクである)じゃない、つい最近までローソンの店頭にもあったようなジュース類が多数捨ててある。
とはいえ、これらは小屋の住人が捨てたものとも限らない。
釣り人などが、立ち寄った際に捨てたのかも。
いずれにしても、現在小屋は使われていないが、ここまで人の往来は続いているらしい事が分かる。
野外に向けられた大きな豆電球は、夜間も作業をしたことを意味するのか。
ドーム上の一部にはプレハブ小屋が乗っけられている。
どこから入るのかは分からないが、時間もなく、詳しくは調べなかった。
写真に写る手すりは、脇に流れる沢に設けられた堰に取り付けられたもので、ここを渡って対岸に