ゲートから200mほど進むと、早速にして1号トンネルが出現。
プラスチック製の簡単な銘板が掲げられている他は、至って殺風景な坑口の様子である。
特にトンネルをウリにしている観光道路らしい様子は見られない。
それはさておき、記念すべきこの一本目の隧道の正式な名称は「1号トンネル」。
当初はダム管理道路のトンネルとしてこの名前だけで足りていたと思われるが、観光道路化を契機に親しみやすい日本語の名称「折立」を付与したのだろう。
ちなみに、折立は周辺の字名で、他の隧道はほぼ隧道周辺の沢名などから名付けられている。
全長235.7mと、長くもない1号トンネルであるが、長方形断面のスノーシェッドから入ると間もなく本来の地下部分となる。
この断面の形状が特殊だが、これはこの先の他の隧道も同様である。
よく見る馬蹄形や半円形の断面ではなく、扁平な曲線を描く天井を垂直の側壁が支える形状である。
力学的に決して優秀な隧道断面ではないと思われるが、なぜ全ての隧道がこのような断面に揃えられたのか、不思議なところである。
直線のトンネルだが勾配は結構きつく、これもまたシルバーライン前半の各隧道にほぼ共通する特徴である。
残念ながら、私はちょっと人目を憚りながら走行しなければならない立場なのだが、完全に一本道の隧道内において逃げ隠れする事は不可能。
ただただ追いつき追い越していく車の邪魔にならないよう、危険を感じさせないように出来る限りのオーバーアクションで存在をアピールするより無かった。
具体的には、手持ちのSF501を車の接近に合わせて点灯させ、地面や天井を盛んに照らすのだ。
ドライバーが早めに光に気がついてくれれば、余裕を持って回避してもらえるだろうと考えた。
また、車が追い越していくときには、必ず停止することも忘れなかった。
しかし、それだけしても実際には、思いのほか頻繁に大型車が通過するので、決して安心できる状態ではなかった。
また、いつ管理者や警察官によって制止を求められないとも限らなかった。
最初の隧道だけにもの凄く緊張していたが、特に何事もなく通過出来た。
…それはそうだ。
ただの隧道だもの。
妙に力んでいる自分が、少し可笑しかった。
1本目を数台の車に追い越されながらも無事通過できたことに少し安心し、行く手に2本目がすぐに現れた時には