【訪問記】(2005年10月)
犀潟駅からほくほく線に乗車。約40分後,トンネルの中にある薄暗い美佐島駅のホームに降り立った。
この駅はトンネルの中にあることで有名だが,最初は何も知らなかった。それが友人の紹介でこのたび訪問と相成った。
ホームに降り立つとさっそく見るからに頑丈そうな扉がある。が,前に立つと自動であっさり開いてくれた。・・・そうでなきゃ困るが。
扉を一枚くぐると明るい空間に出た。やっと生きた心地がする。見ると,右手奥にはさらにもう一枚扉が,そして左手には待合室がある。時速160kmで爆走する特急「はくたか」の通過を体感するため,しばらくここに居座ることにした。
・・・それにしても風の音がうるさい。
ビューー・・・ ビューー・・・ (ぴゅーー・・・ ぴゅーー・・・かな?)
こんな,風が隙間を通るとき特有の音がずっと聞こえてくる。どうやら,この駅までお世話になった普通列車がトンネルを抜け切るまで止まないらしい。
やがてスーッと音が引き,静かになった。が,しばらくすると,ドンという衝撃音とともに再びあの音が始まった。ついに「はくたか」のお出ましである。時刻表とも照合し,間違いない。
わくわくしながら通過の瞬間を待つ。しかし,あの音がどんどん大きくなることも,ひどくなることもない。・・・やがて,ものすごいスピードで何かが扉の向こうを通り過ぎていった。
あまりにあっけなかった「はくたか」の通過後,もう一枚の扉をくぐって階段を登る。と,そこにはきれいに整備された駅舎があった。
外に出る。暗くて何も見えない。駅から右手に歩く。・・・わずかに人家の明かりが見える。引き返して駅から左手に向かう。・・・何もない。きれいに整備された美佐島駅舎が場違いに思えた。
駅に戻って周辺を観察する。ここはとある宗教家の生誕の地であるらしい。彼の名前は二度と忘れまい,とこのときは思ったが,この文章を書いている時点ですでに忘れた。
やがて直江津方面行き普通列車が到着。扉が開き,高校生が階段を登ってくる。見慣れぬ連中が階段てっぺんで待ち構えているので驚いただろう。彼女は駅舎横にとめていた自転車に乗り,去っていった。
我々もこの地を去ることにする。例の異様な音と注意を促すアナウンスとともに,越後湯沢行き普通列車がやって来た。早くホームに,と焦る我々を嘲笑うかのように,ホーム手前の扉はなかなか