国道158号沢渡〜中ノ湯間の旧道探索も、残すは2つのステージだけとなり、これらのステージを越えた存在(いわばExステージ)として我々の最終攻略目標となっていた“ 釜トン ”が、いよいよ近付いてきた。
終盤の第4、第5ステージは、いずれも1km以上あった過去3つのステージよりもだいぶ短く、それぞれ現道の新坂巻トンネル(昭和53(1978)年竣工、全長294m)と赤怒谷トンネル(昭和59(1984)年竣工、全長396m)に対応した500m前後の旧道である。
一連の旧道では既に十分過ぎるほどの危険を体験してきた我々にとって、この段階でも油断などというものはなかったと思うが、ただ、私の中に「完全踏破が出来そうだ」という気分は生まれていた。根底にあるのは、ここまで二人で越えてきた自負である。
だが、そんな気分を私が持ったことを今になって振り返れば、少しだけ可笑しくなる。
なにせ、私達は二人とも子猫のように知らなかった。
第4ステージの、地図からは計り知れない “ 凶 状” を!
一度も旧道の下調べをしていない我々にとっては、知らないのは無理のないことだった。
特に第4ステージのこちら側、坂巻温泉側の入口は、険しさとは真逆のむしろ“優美さ”の舞台であったから、勘違いも容易く起きた。
ステージ4の開幕を告げるのは、この 驚くべき細身の橋 !!
この旧橋の存在は、隣にある現道の坂巻橋からもよく見える。この写真もそこから撮影したのである。
だが、見え易いかと問われれば、答えは微妙だ。
徒歩や自転車で坂巻橋を使えば確実に目にするはずだが、自動車だと気付かないことの方が多そうだ。
旧橋は現橋より少し低い位置に有るため、ある程度車高がある車で、かつ上り線(松本方面へ進行)の助手席側でないと見えにくいと思われる。
それに、トンネルとトンネルの間の橋の上でほぼ真横を向かないと見えないだろう。
基本的に一連の旧道群の遺構は、現道から見えにくいものが多いのだが、特に存在感が大きなこの橋でさえも、恵まれているとは言えない。
にしても、本当にスリムな橋だ。強度は大丈夫なのかと思ってしまうが、上高地にマイカー規制が敷かれる以前の「想像を絶するほどに激しかった」とされる観光シーズンの交通量を捌いていたのだから、決して弱くはないのだろう。
この橋の形式は、言わずと知れた、コンクリートアーチ