海抜1720m。
塩原の入口から1200mも登ったことになる。
26kmも走って我々はやっと、塩那道路の核心部にある「5kmの特異な道」に、辿り着いた。
この、日留賀峠から先の5kmを、私は「天空街道」と呼んでいる。
もはや、この名前の他には思いつかない。
それは、東北には比肩するもの無く、関東地方でも有数と言える高所の道。
観光道路に宿命づけられ生まれた道の、成れの果て。
今や、廃なるを宿運とす、天空の道である。
上の全体図はかなりの低縮尺だが、その中でも一際存在感のあるカーブ…
そう言って良いだろう、この日留賀峠のターンカーブ。
これまで稜線を目指し登ってきた道が、遂にその目的を果たし、ここから先は稜線の西側に進路を取る。
“天空街道”区間は、黒磯市と藤原町の境界線に掛かっていて、その前半の半分はギリギリ藤原町に含まれている。
全長51km中、20分の一だけの藤原町内の道中だが、そこにこれといった案内はない。
藤原町では、自分たちの町域の屋根だけをかすめるこの道をどう、思っているのか…?
日留賀峠から、日留賀岳に続く稜線を望む。
くの字に曲がった稜線の突端の出っ張りが日留賀岳で、海抜は1848mある。
これは、塩那道路の掛かる稜線にあっては最も高い。
見たところ稜線は穏やかで、歩いて山頂に立つことは比較的容易に見える。
また、山歩きのサイトを見たところ、日留賀岳には塩原町から登山道が山頂に達しているという。
つまり、この稜線と登山道を経由すれば、塩那道路のこの地点に、ノーゲートでたどり着けると言うことになるが。
歩くなら、そっちの方が楽だろう。26kmも車道を歩くよりは。
ただ、稜線上に踏み跡は見られない。
そこを冒して歩くというのは、どうも…気が引けるな〜。
これまで、決してみることが出来なかった藤原町側の眺め。
足元からすらりと落ちる山襞の先は、薄緑色が帯状に広がる谷がある。
男鹿川やその上流の横川に沿った集落や田畑だろう。
目をこらせば、建物の一つ一つも見える。
その先に目を遣れば、あとはもう、見える限り延々に山である。
地図で確認すると、この山並みは栃木と福島とを隔てる県境の山々だ。
そして、おそらく視界の果てに見える一際高い山脈が、尾瀬だ。
いままで、山行がとは全く接点の無かった、日本一の観光