2010/8/24 12:43 【現在地】
全面崩壊を予感させる須田貝隧道、南口坑門。
それは、「廃隧道とはかくあるべき」と言いたくなるような “完璧な姿” だった。
完璧。
まるで大自然に取り残された文明の欠片。
武骨でなにも飾らぬ坑門が、孤立無援で立ち尽くす。
私の大好物。
しかし、この暗がりで誰に看取られることなく死ぬのか。
役目を終えた道路の平凡な末路だが、哀れである。
近くで見るとこちら側にも、鉄パイプのバリケードの痕跡があった。
しかし、折り畳むように崩れた後は誰も修理しないらしい。
南口さえ塞いでおけば、立ち入る人もおるまいということか。
これなどはトンネルの両坑門が表裏を分けた典型で、集落に面していた南口が表、山と湖に面した北口が裏なのであろう。
さて、こんなに荒れ果ててしまった南口だが、ここから先にはどんな道が続いているのだろう。
上の2枚の写真では信じられないかも知れないが、実はこれでも道は舗装されていた。
舗装の上に大量の瓦礫と土が流れ込み、緑が育っているのである。
これまた廃道のお手本のような景色だが、色々な意味で…アツそうだ…。
全長330m程度の須田貝隧道を通過したことによる風景の最大の変化は、湖が現れたことである。
青みがかった水面は、思いのほか切り立った緑の斜面の下に細かい波を立てていた。
湖上は風が強い?
ああ…。
暑い。
隧道を10m離れたら、もうそこはジャングル。
熱帯のジャングルである。
こんなのが続くのか…?
激藪に埋もれつつ、もう一歩で見えなくなりそうな坑門を振り返る。
次に逢うときは、どんな姿を見せてくれるだろう。
期待しないでいることにしよう。
それにしても、この坑門前の藪の深さは、いったい何があったのかと訝しがるレベルだ。
踏み込んでみてはじめて分かったのが、地面が平らでないと言うことだ。
1m以上も凹凸があるのだ。
そして、この場所の山手側にはゴーロのような小さな沢が流れ込んでいた。
つまり、沢が大量の土砂を吐いて道を塞いだところに、植物が侵入したというのが真相らしい。
廃道後の土砂災害だろうか。
激藪脱出!
激藪の区間はわずかで、せいぜい20mくらいしかなかったと思う。
ピンポイントな災害だったのである。
正直、この暑さの中でのヤブ漕ぎは意識を失う危険があるので、