【位置図(マピオン)】
日本列島最大の半島である紀伊半島の最南端に位置する黒潮の町、それが串本だ。
そして半島の外周を巡る幹線である国道42号も、この串本に至ってようやく長い道のりの折り返し地点を迎えるのであり、旅人に感慨をもたらす極みの地である。
そんな串本の中心部から僅か3kmほど西へ離れた国道42号上に 高浜隧道 がある。
同国道では一番南に位置するトンネルだ。
お馴染みの「道路トンネル大鑑」によると、高浜隧道のデータは以下の通りで、 昭和42(1967)年竣工 とされている。
高浜隧道 全長62m 車道幅員7.5m 竣工年度昭和42年 「道路トンネル大鑑」より
だが、右に掲載した (画像にカーソルオンしてね) 昭和28(1953)年の地形図にも現在と同じ位置に隧道が描かれていることから、昭和42年以前にも隧道が存在した事は間違いない。しかし、新旧地図の比較からは現在の高浜隧道がその古い隧道を改修したものであるのか、隣接地に新たに建設されたものかの判断は出来ない。
確認のため現地へ行くと、果たしてそこには期待した旧隧道が発見されるのであるが、話しはそれだけで終わらなかった。
2014/3/26 10:42 【現在地】
近くに車を止め、自転車に乗り換えて高浜隧道へ向かうと、難なくそれは現れた。
地図で見たとおりの海に面したトンネルで、坑門に続く緩い右カーブの途中で振り返ると、典型的なトンボロ地形に立地する串本の低層な街並みが、黒潮の色とも思える青黒い海の向こうに見渡せた。
嵐の前を思わせる空の色と風の中で、町は静かに伏しているような印象だ。
串本の市街地から約3km離れた現在地は既に隣町への道中であり、隧道が貫いている鋭い岩山の姿は、この地が古くからの関門であったことを理解させるに十分だ。
まさに、絵に描いたような「隧道開削待った無し!」な地形である。
そして、岩山の稜線までコンクリートでガチガチに固められた高浜隧道は、必要以上に目立っていた。
今のところ、その周りに旧隧道らしきものは見あたらない。
大きな大きな高浜隧道の坑門は、闘いに身を置く戦士の鎧のような武骨さである。
坑門がトンネルの進行方向に対して斜交していることも視覚的な意味での巨大さを際立たせており、意匠こそ少ないが、コンクリートのマッシブな迫力がいかんなく発