【周辺図(マピオン)】
大井川鐵道井川線のアプトいちしろ〜接岨(せっそ)峡温泉間には、平成2年10月2日に長島ダムの建設に伴って付け替えられた旧線が存在している。
廃止された旧線の総延長は5.6kmあり、区間内には駅もあった。
元々は昭和29(1954)年に中部電力の井川ダム建設に伴う工事用軌道として敷設された路線で、昭和34(1959)年から大井川鉄道(現・大井川鐵道)井川線として旅客営業を行っていたのだが、国の長島ダム事業の進展によって水没補償を受ける形で新線へ移転したものである。 (新線には日本で現役唯一のアプト式鉄道区間がある)
長島ダムが大井川を堰き止めて生み出された人造湖を接岨湖という。
接岨湖に旧線は水没し、新線は湖畔や湖上を駆け抜けている。
中でも新線にある奥大井湖上駅は、その名の通り(おそらく日本で唯一)湖の上にある駅として独特かつ爽快な景観を誇ることから、秘境駅ファンに限らず、多くの観光客が訪れる。
そして、彼らはそこで、ほぼ間違いなく、目にすることになる。
青い湖面のその先に、深い拒絶と危い誘惑を同居させた旧線の姿を!
…そんな状況であるから、読者諸兄による情報(目撃談)は、早い時期から私の元に複数寄せられていた。
昭和42(1967)年と現在の地形図を比較すると、旧線と現在線(新線)の位置関係が大まかに把握できる。
また、探索の事前情報として、JTBパブリッシングの「 新・鉄道廃線跡を歩く3 」を参考にした。
同書掲載の地図には、右の旧地形図よりも若干詳しい旧線のラインが敷かれており、トンネルの位置や数などもより正確なようだった。
(右図の旧線上に書き加えた大加島仮乗降場と犬間駅も、同書の地図から把握)
だが、実際の探索は水没区間外の下流部分(アプトいちしろ駅から長島ダムまで)を中心に行われており、水没区間内の旧線はやはり、奥大井湖上駅付近からの遠望に終始していた。
となればもちろん、 私が目指すのは、水没区間内の路盤に立って、可能な限り踏破することである!
そんなわけで探索計画を立てることにしたのだが、これがなかなか最初から頭を悩ませてくれた。
どこから旧線へ立ち入るかという、初っ端でつまずいたのだ。
事前情報(新・鉄道廃線跡を歩く3)によって、一番容易なアプローチと思われた、「上流側新旧線分岐地点から旧線へ