2014/5/31 7:02 【現在地】
飛越トンネル完成以前の国道360号は、私の想像よりも遙かに荒れ果てていた。
小豆沢集落から旧道に入り、初めのうちはどこにでもありそうな旧国道だったが、県境を跨いで岐阜県に入った辺りから、明らかに廃道の状況になった。
そして、探索開始から15分ほどで、私は大きな崩壊現場に遭遇したのだった。
私は全く個人的な都合(あと1時間後に別の場所で待ち合わせの約束アリ)のために焦っていた。
こういう状況で探索を続行するのは一番良くないのだと思うけれども、だからといって一度探索を始めてしまった以上、「じゃあ、やめ」と引き返すのには決断が要った。
私は厳しい崩壊が一度きりである可能性に期待し、自転車を担いで写真の崩壊現場を越えた。より正確に言えば、切れ落ちた部分を山際に沿って迂回した。
そこには辛うじて踏み跡らしきものがあったが、アップダウンが案外に大きく、自転車のために余計な苦労を強いられた。
崩壊を突破した私の前に現れたのは、それまでと何も変わらない… 相変わらず轍の見あたらない… 緑一色の路面であった。
この時点で、いよいよヤバイものを感じた。
どうやら気軽な暇潰しの対象としては、とても手に負えないものを引き当ててしまったようだ。オブローダーとしての運があるのか無いのか…。
ともかく、どうしよう? ドツボに嵌らぬうちに引き返すべきか。もう少し様子を見るために先へ進むか。
…でも、悩んでいる内にも私は進んでいて、そしてご覧の場所に出た。
橋だ。支流を渡る小さな橋が現れた。
少しだけテンションが上がったが、それがガードレールを欄干の代わりにした、親柱さえ持たない小橋であることを知ると、上がったテンションはすぐ元に戻ってしまった。
橋を越えて、更に進む。
気が急いているせいで、先の事がいつも以上に気になった。
GPSを携帯していたので、現在地の確認は出来る。いま私がいる場所から見ることができる、この道の進路上にある一番遠い場所は、あの赤白の大きな鉄塔だ。
鉄塔のすぐ下に道があることを、電信柱の列が暗示していた。
電柱は、先ほどの崩壊地で見たとおり、倒れたまま修理されず放置されているが、あの大きな鉄塔は、さすがに管理されているだろう。
となれば、鉄塔まで辿り着ければ、道の状況が改善するのではないかという予測も成立する