1. 種子島・屋久島航路
毎朝8時、鹿児島本港・南埠頭では種子島と屋久島に向かうフェリーに行列ができる。
種子島へ向かうフェリー「プリンセスわかさ」は、
屋久島へ向かう「フェリー屋久島Ⅱ」の後を追うように南埠頭を出航する。
2004年迄は、種子島へは、九州商船の「フェリー出島」が就航していたが、
種子島・屋久島航路に市丸グループのコスモラインが参入すると、
コスモラインの「プリンセスわかさ」に種子島航路は引き継がれた。
「プリンセスわかさ」は、このとき新造船されたもので、船室も広く、乗り心地がいいフェリーだ。
時間が許すなら、快適性で、高速船よりこちらに乗りたいものだ。
種子島・屋久島航路には、かねてから、いわさきグループが高速船を就航していた。
このジェットフォイル「トッピー」は、鹿児島と種子島、屋久島を1時間30分から2時間で結ぶ。
鹿児島空港が鹿児島市街から遠いこともあり、
高速船「トッピー」は、飛行機の代わりとして利用されている。
高速船を就航するためには、フェリーを運行することが法令上義務付けられており、
種子島・屋久島航路のフェリーは、
いわさきグループが高速船「トッピー」を運行するための
フェリーの役割を担ってきた経緯がある。
しかし、市丸グループのコスモラインが「ロケット」の愛称で高速船事業に参入したことで、
種子島・屋久島航路のフェリーを、
いわさきグループの高速船「トッピー」を運行するためのフェリーと位置づけできなくなった。
「プリンセスわかさ」は、高速船「ロケット」のためのフェリーだからだ。
つまるところ、いわさきグループと市丸グループの仁義なき戦いが勃発したのである。
結局、いわさきグループは独自のフェリーを用意して運行せざるを得なくなり、
「フェリーはいびすかす」が誕生した。
「フェリーはいびすかす」は夕方、人知れず鹿児島の谷山港を出て、種子島で夜を明かし、
明朝、屋久島に着くという、変則的な運行をしている。
貨物船なので客室は狭く、乗り心地も良くないが、
その運行時間が幸いして、ロケット打ち上げを見に行く人に密かに人気を集めている。
種子島・屋久島航路には、いわさきグループの「トッピー」と、
コスモラインの「ロケット」の2つの高速船が競争を繰り広げたが、消耗戦を強いられた。
2012年4