黄瀬萢

黄瀬萢

[1] 十和田湖八甲田山連絡道路黄瀬萢 (おうせやち)

Webページ

[2] 道路レポート, , http://yamaiga.com/road/hakkouda/main5.html

それが目指す黄瀬萢なのではないかと、出会う度に期待を抱かせる、大小の湿原や、草原。

かつて遭遇したことがないほどの極限の藪と、楽園のような風景とが、交互に現れるのである。

求め続けた脱出の瞬間は、近いのか。

坦々と蛇行するだけの10万分の1道路地図上の点線は、何も語ってはくれない。

時刻は遂に、正午に達した。

入山から、6時間が経過した。

ヘアピン以降では、これまでで最大級の湿原帯が左に現れた。

踏み跡はこの縁に沿って、さらに次の藪へと吸い込まれるように登っている。

あなたは、想像が出来るだろうか。

この景色の中に、かつて車道があったこと。

登りながら振り返る。

そこに6時間ぶりに見る、御鼻部山の姿。

ゆったりとした緑の絨毯が、僅かな起伏を描きながら繋がっている。

私が踏破してきたのは、その絨毯のただ中であった。

それは、直線距離にして10kmにも満たないものであるが、6時間という時間が、その道のりをこれ以上なく語っている。

過去に、一本の道でこれほどの時間を要した経験があっただろうか。

御鼻部山から入ってくる少し前、逆側からこの山脈を見、底知れぬ恐怖を感じた。

しかし、いまはこうして、その山脈を振り返っている。

次は、右側に広大な草原が現れた。

もう、ここはボーナスゲームに入っているのか?

これは、ウィニングランなのか?

そんな気分にさせられる。

私はこの時、天上の人にでもなったような、最高の気分だった。

ここにチャリを運んだ事の、その馬鹿らしさが、最高に愉快だった。

「かつて車道だったそうなので、チャリで来たんです。」

もし登山者に叱られたら、そう言ってのけよう。

独りほくそ笑む私だった。

遂に見た、あれが地獄峠である。

あの鞍部が、海抜1260mを数える本道の最高所だ。

最初にガイドブックの地図に其の名を見たとき、思わず笑ってしまった。

「地獄峠?」

なんて恥ずかしい、小学生が考えたような名前なんだろうと。

どうして、こんな仰々しすぎて、逆に陳腐な名前になっているんだろうかと。

笑ってしまった。

だが、地獄峠は大まじめにそこに実在している。

しかも、青森県で最も高所にある峠として。

車道が通る(った)峠としては、東北有数の高さを誇る峠として。

私は、もう殆ど藪を写すことをしなかった。

履歴

[5] この記事はSuikaWiki Worldに作成されました。 に最終更新されました。 https://world.suikawiki.org/spots/22776855933297930

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