御鼻部側から進入し、約5km。
最初のピークを過ぎてから一気に廃道化が進んだものの、比較的順調に最初の湿原に着いた。
アクシデントといえば、詳細地図をどこかで紛失したことぐらいだった。
南八甲田ならではの景観が、間もなく私の眼前に出現する。
ルート上の地名は、『 昭文社山と高原地図4 十和田湖・八甲田 』を参考にしています。
このレポでは、地図を用意しています。
見出しにあるをクリックして下さい。別ウィンドウで開きます。(要javascript)
袖ヶ谷地 地図で確認
実は、辿り着いたときには、ここが袖ヶ谷地だとは思わなかった。
既にこのときは手許から失われていた山岳地図ではあったが、出発前にほぼ暗記するほど読んでいたから、この袖ヶ谷地を境にして、前谷地、大谷地と、徐々に規模を大きくしながら湿原が順に出現することを知っていた。
だが、樹林帯を突破した私が見たのは期待していた湿原の景色ではなく、チシマザサの原とそこに島のように点在するアオモリトドマツたちによる景観だった。
残された僅かな地肌の見えるスペース、すなわち旧道敷きから左右に踏み跡があるのを見つけた。
踏み跡はすぐにチシマザサの樹海に消えたが、地面にはしっかりと踏跡が感じられる。
意を決して胸までの笹藪を掻き分けること、僅か5m。
そこには、別世界が広がっていた。
湿原…ではない。
やや乾いており、草原といった方がしっくり来るだろう。
しかし、この晴れ晴れとした景色を目の当たりにしたときの爽快感といえば、これまでの苦労が一瞬にして吹っ飛んだ。
そして、心の心底から、来て良かったと確信できた。
この湿原は、御鼻部側からは最も近いものだが、旧道からはほんの数メートル笹藪で隠蔽されているために、立入禁止のロープなどもなく、極めて天然性が高いように見えた。
本当に、なんて気持ちの良い場所なんだろう。
もう、道(=藪)に戻りたくないよー。
などといっているうちにも時間は過ぎるので、潔くチャリに戻り、再びこぎ始める。
実は道の両脇にあった踏み跡は、いずれも湿原(草原?)に続いていた。
つまり、旧道は湿原の隙間を貫いているのだ。
或いは、湿原の中央に道を通したために、乾いた車道脇のみ、笹などが覆い茂るようになってしまったのだろうか。
進むにつれ、私はそう考えるようになるのだっ