本尊岩隧道の災害歴 『土木学会論文集No.722/III-61,315-330,2002.12 一般国道49号本尊岩地区岩盤斜面の安全性評価と防災対策』より転載
国道49号の本尊岩(ほんぞんいわ)隧道(昭和39年竣工)をここで紹介してから、既に5年が経過した。
本尊岩隧道といえば何と言っても忘れられないのが、現地でたまたま知り合った警察官が、「ここは日本一危険な隧道だ」と口にしたということだ。
何が危険って、右の図を見て貰えば一目瞭然である。
隧道がその基部を貫いている「本尊岩」が、ことあるごとに崩れているのだ。
そして、やがては致命的な崩壊に至る危険性が指摘されている。
無為に放っておけば北海道の豊浜トンネルで起きたような惨事が再現される可能性があり、5年前も既にそうだったが、全力での落石警戒態勢がいまも続けられている。
国道49号という東北と北陸を結ぶ幹線国道は、喉元に匕首を突きつけられた状態で働き続けているといっていい。
だが、このような危険で不安な状況も、ようやく終わりが見えてきた。
平成21年に着工された別ルートのバイパス「揚川改良工事」(揚川バイパス)の完成が平成24年度内と予定されており、順調にいけば2年以内に本尊岩隧道は旧道になることだろう。
…その後は、どうなるのか。
おそらく、隧道は通行止めになるのではないかと思う。
もしかしたら、岩盤を安定させる目的で、コンクリート充填のうえ完全密閉されてしまうかもしれない。
そんな余命幾ばくもないかも知れない本尊岩隧道には、前回のレポートでは解明せずに終わった、いわゆる“謎の遺構”が存在している。
ここから先をご覧頂く前に、前作を軽く一読されることをお勧めしたい。
何が“謎”だったのか、お分かりいただけると思う。
そして今回は、“謎”の答えが分かったというお話しだ。
“謎”を抱えたまま廃道になったら“浮かばれない”と思うので、ここに明かしておきたいと思う。
まずは何が“謎の遺構”なのか をはっきりさせよう。
右の写真は本尊岩隧道の福島側(東側)の風景で、正面奥に見えるのが現在の隧道である。
左はなみなみと水を湛える阿賀野川、正面にはまるで屏風のように切り立つ本尊岩であり、隧道無しでは決して突破し得ない地形である。
さて隧道はワーレントラスの芦田橋に接続して一連の道路となっている