(ふじさんそっこうじょ・ふじさんとくべつちいききしょうかんそくじょ)
静岡県富士宮市・富士山頂剣ケ峰に、気象庁が設置していた気象観測機関の一つ。2008(平成20)年に「富士山特別地域気象観測所」と名称変更されている。
1932(昭和7)年、中央気象台が富士山頂東安河原に「中央気象台臨時富士山頂観測所」を設置、同年7月1日午前6時から通年地上気象観測が始まった。わが国最初の超短波無線機を用い観測結果を通報した。1936(昭和11)年に剣ケ峰に移転、「富士山頂観測所」となった。1949(昭和24)年「富士山観測所」に、1950(昭和25)年「富士山測候所」へと改称し、業務、技術の2課制となった。
1963(昭和38)年、本州を直撃する台風の早期探知を主眼に、富士山頂への気象レーダー設置が決定、レーダードームなどの建設が始まった。翌年の1964(昭和39)年には世界最大級の探知範囲(半径800キロ)を誇る気象レーダーが完成、同年10月から運用を開始した。
山頂では風向、風速、気温など地上気象観測、レーダー気象観測、一部の気象官署間のVHF通信の中継基地業務、機器の保守調整および庁舎維持管理が主な業務であった。
1970(昭和45)年には富士山頂の庁舎改築工事が始まり、1972(昭和47)年からは送電線の更新工事に着手、ともに1973(昭和48)年に完成した。1978(昭和53)年には気象レーダー、レーダーリレーを更新した。
しかし、通信設備の老朽化や気象衛星「ひまわり」の打ち上げなどほかの観測技術の発達を受け、気象庁は1997(平成9)年8月に富士山レーダー廃止の方針を決めると、太平洋に面した静岡・牧之原台地と、長野・車山山頂に代替レーダーを新設。富士山レーダーは1999(平成11)年11月1日、その役割を終えた。
その後レーダードームは2001(平成13)年9月に解体撤去、山梨県富士吉田市に引き渡された。市は2004(平成16)年4月 、市歴史民俗博物館近くに「富士山レ−ダ−ド−ム館」をオープン、気象体験学習施設として生まれ変わった。
そして、富士山測候所も自動観測技術の発達に伴い、気象庁は2003(平成15)に職員の常駐観測終了を決定。翌2004(平成16)年9月30日で無人化(実際は台風の影響で10月1日に延期)され、72年間の有人観測の歴史に幕を